留学時代、心を鷲掴みにする演奏、本当に幸せな気持ちにさせてくれる演奏を間近で聴きました。
例えば、フランス留学時代の恩師、ハンガリー留学時代の恩師の演奏がそうでした。
先日、ある国際コンクールで1位を受賞されたピアニストの演奏会を聴きに行ったときのこと。
強靭なテクニックに支えられ、やりたいことが自由自在にできる。
ミスが少ないのはさすが。
ミスなく安定して弾けるのは、聴いている方も安心するし、コンクールでは大事な要素。
逞しい精神力、安定したテクニック、しっかり考え抜かれ、本当に良く弾き込んである立派な演奏。
でも・・・・。
聴いた後、なんだかすごく疲れてしまったんですね・・・。
なんでだろう?
こんなに立派なのに・・・・。
もっと聴いていたいと思わせるような、心を打つ演奏って何なんだろう?とそれからずっと考えています。
国際コンクールは、国をまたいでの移動でも疲れない身体、たくさんの演奏曲目を抱え、1~2週間くらいかかるスケジュールをこなす能力、体力、どんなピアノでも、どこでも弾ける!という精神力・・・などタフであることが求められると思います。
それはきっと、ピアニストとして世界で弾いていくには欠かせない能力でしょう。
でも、それと心に訴えてくる演奏をするかどうかというのは、また全然違うことなのではないか・・・。
音楽って何のためにあるんだろう??
最近は私の子どもの頃に比べて、気軽に参加できる子どものコンクールが山ほどできました。
ちょっと弾ければ参加できる、予選で落ちても参加費さえ払えば別会場でまた受けられる・・というように、現代のニーズに合わせて、コンクールの形は変化してきました。
コンクールもビジネスですし、コンクール側は受ける方の心理をよく理解しているので、受け始めると一喜一憂しながらだんだんその世界にはまっていきます。
仕組みをわかって、きちんと選んで参加すれば勿論良い面もあると思いますが、小さい頃から余分に競争したり、傷つくこともないかな、と私は思っています。
だって音楽は、本来競い合うものではないし、弾いていて幸せであることが一番大事だと思うから。
いい音楽をするけれど、すごく繊細な生徒さんは、コンクールではない道もあると思うし、コンクールがあるとやる気になる!という生徒さんは、挑戦してみたらいいのでは?という程度のものかな。コンクールは。